2 パフォーマンスを上昇させる胸式呼吸

・覚醒作用のある胸式呼吸

胸式呼吸は、ボイストレーニングは腹式という常識が生まれてからは、
発声においては悪と考えられる期間が長かった呼吸ですが、
実はちゃんとした利点もあるのです。

胸式呼吸とは、「肺を横に広げる」呼吸です。
肩が上下に動くのは、肋骨周りが膨らみ、肺を左右に広げているからです。

肺が左右に広がることによって内部面積を大きく使い、肺活量の上昇を狙えます。

上半身、特に胸部周りの筋肉を使い肺を広げる呼吸で、吸うことに特化した呼吸です。

横隔膜のサポートを入れない場合(使えない場合)、ゆっくりと吐くのは苦手な呼吸で、
結果として早い呼吸、浅い呼吸になりますが、これが正しい胸式呼吸です。

早く、浅く呼吸をするため、肺の中の空気を入れ替える頻度が高く、
胸部周りから筋肉を発熱させ、早く浅い呼吸で心拍数を意図的に上げることで、
副交感神経を刺激、頭の覚醒、瞬発的な判断、
体の反応速度の上昇など、パフォーマンスの向上を狙えます。

正しい胸式呼吸は運動、スポーツに適した呼吸であり、
決して悪い呼吸ではありません。

基本的に人間は胸式呼吸の時間が多いです。
これは前述した思考のクリアにする頭の覚醒や体を活動的にする効果が、
二本足で立つというその人体の構造上、
立っている時は胸式呼吸に切り替わるように進化したからだと考えられます。

しかし、「普段の胸式呼吸」は浅い呼吸であり、
本来の胸式呼吸のメリットを得られるものではありません。

正しい胸式呼吸であれば胸が広がり肩が上下するため、
姿勢の安定が無意識に発生するため、猫背になることはないのですが、
浅い胸式呼吸によって胸部の膨張が少なくなり、
前傾でもできてしまう胸式呼吸になり、少ない胸部の膨張が行き場をなくし、
結果肩を上下させ行うという浅い胸式呼吸が多くなりました。

「正しい胸式呼吸」では、胸の開閉、
肩の上下による首周りの動きなどによる肩回りのコリの解消、
背中の上部をゆったりと使うことによる首周りのコリの解消など、
体が固まるのを防ぐ効果があります。

また、「胸式呼吸」とはいうものの、肺を動かすのは横隔膜であり、
慣れてくれば胸式呼吸でも横隔膜は深く動かせるので、
意図的に胸式呼吸での深い呼吸を行い、
気分を落ち着けながら体を動かすスイッチを入れることも可能になります。


胸式呼吸のメリット
・頭を活性化させ、集中することに適した呼吸
・重心を上げながらも安定させ、フットワークを軽くする
・スポーツなどにおいては、集中力と瞬時の判断をより良いものにする


胸式呼吸のデメリット

・集中するために適度な緊張感を持ち、リラックスできない
・浅く速い呼吸なので、歌唱などではブレスポイントが細かくなる
 ロングトーンなどでは息が足りなくなる

神薙拓那のボイトレ部屋

神薙拓那【カミナギタクナ】通称なぎーのボイストレーニングに関するあれこれ。 ボイトレを教えはじめ10年を過ぎ、積み重ねた知識や技術をまとめていきたいと思います。 何かしら、誰かしらのお役に立てば。

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