ボイトレに共通する基本姿勢

ボイトレにおいて最も重要なのは、

声を響かせるための、息を使いやすくするための姿勢です。

本項目では、基本的な姿勢の構築の仕方、保ち方について記載していきます。


・上半身のサスペンション

発声において大切なのは、息や筋肉を使いやすくする姿勢ですが、

その姿勢の根幹たる部分は「腰」にあります。

腰の前傾や後傾により、「背骨の胸、頭を支える負担」が変化します。

背骨は体の支柱でもあり、そのバランスが崩れると、支えるために余計な筋力を消費し、

結果発声に邪魔な力みが生まれることになります。

本来、背骨は緩やかなS字を描き、その緩やかな湾曲により、

歩行時の頭蓋の揺れや、視界のブレを制御しています。

車でいうところの、ガタガタ路面を走る際の衝撃を吸収するサスペンションです。

上半身においてのサスペンションが背骨に当たります。
下半身のサスペンションは、わかりやすく膝、足首などの関節です。

さて、背骨がサスペンションであるならば、

それを正しく使わなければ衝撃波吸収できません。

背骨というサスペンションを正しく使うこと、

それが「正しい姿勢を保つ」ということなのです。


・サスペンションのために腰を立てよう

腰を立てるとは、腰を正しい位置に持っていくことであり、

まっすぐ立てることではありません。

腰をまっすぐ立てようとすると、
背骨のS字も失われる(もしくは大きくなる)ことがあるので、
腰だけを意識するのではなく、全身のバランスをとって腰を立て、
背骨のサスペンションを活かすことを意識しましょう。

まずは、腰を支えるために膝を意識します。
人間は椅子という文明により、楽に座ることを覚えた結果、

股関節の筋肉が衰退している傾向にあります。
股関節の筋肉が弱ると、足が開き気味になり、膝が外を向いてしまうので、
そこを修正して腰を立てる土台にします。

内ももを内側にひねるように意識しながら、膝を前方に向けます。

股関節が弱っている人は、この時点で腹筋と背筋の下部が突っ張るのを感じると思います。
これは正常な状態に戻ろうとしている影響で、この状態に胸を乗せて頭を支えることで、
正しい姿勢を獲得することができます。
ただし、腰を悪くしている人はこの突っ張りの時点で痛みを伴う場合があります。
痛みがある場合は休憩をはさむか、痛みのない時にしましょう。


・背骨のS字を取り戻そう

背骨のS字は、緩やかなカーブを描いています。
しかし、その緩やかな曲がり方は目で見て確認することができません。
なので、一度大きく反らせて、背骨のS字を強く意識します。
これは一度大げさに、悪い姿勢に持って行ってから正しい姿勢へと戻す過程なので、
痛みを伴う場合は休憩するか、大げさにやらずに試してみましょう。

膝を前に向け腰を立てたら、おへそを前に突き出すように張ります。

この時、背骨に無理がかかるほど強く前に出すのではなく、

背筋下部~中部が少し張りを持つ程度に前に出します。
この時、胸から少しだけ反るように、視線が若干上を向くと次がわかりやすいです。

次に、胸を後ろに引きます。
結果的に肩が後方に下がるのですが、肩だけを下げるのではなく、

首と肩がひとつのブロックとして後方にスライドするように意識しましょう。
先ほど視線が上に向くようにおへそを出しましたが、

おへそは前のまま、視線が前を向くように胸、肩、首を「立てる」イメージで引きます。
先の段階で背中の下部~中部が張っていれば、

この段階で背中の上部の張りを実感できると思います。


・背骨のS字を緩やかにしよう

今の段階では、背骨を強制的にS字にしているので、

背筋、背骨、呼吸への負担が大きいです。

しかし、このまま脱力をすれば元に戻ってしまう可能性が高いため、
S字を緩やかにするために「伸び」をします。

腰から胸までを整えた状態で、両手を上げバンザイをします。
この時、少しだけ手のひらを外側に向けてあげると、背骨のS字が崩れにくくなります。

そのまま手を上に引っ張るように、

姿勢が引き延ばされ胸が前にスライドし、前に出したおなかが引っ込むように、

一か所一か所を意識しながら伸びをします。
可能であればつま先立ちまで伸びをしましょう。
太もも、もしくはつま先までが伸びたと思ったら、
伸びをして整えられた全身のバランスを崩さぬよう、ゆっくりと両手を下ろします。

これで、姿勢は完了です。


・姿勢がうまくできているか確認をしよう

今までの過程を経て、姿勢が整ったら、深呼吸をして確かめましょう。
両手を腰に当て、親指を側面、指先を背中側に回し、ゆっくりと深呼吸をしましょう。
腕が回らない人は、背中の動きを意識しながら深呼吸をします。

息をゆっくりと吸うと、おなかが膨らみ、おなかの膨らみが張ってくると、
次におなかの側面が、そしておなかの裏側(背筋)が膨らむ感覚が得られれば、
正しい姿勢で自然と行える「腹式呼吸」の完成です。

背骨側は膨らまず、背骨の左右の肉がゆっくりと、わずかに膨らめば完成です。

この時、深く息を吸うと肩も上下するようであれば、
正しい姿勢で行える「腹式呼吸+胸式呼吸」の完成です。
腹式と胸式の組み合わせは、より多くの空気を取り込める呼吸法で、

肩が上下するだけの胸式呼吸ではなく、

腹式に胸式を乗せてより姿勢を安定させる効果、
酸素をより多く取り込める効果が期待できます。

歌唱においては多くの空気を肺に取り込んで使えるため、

ロングトーンの時間の延長や、声量の拡大につながります。


いかがでしたでしょうか。

まずは正しい姿勢を得て、正しい呼吸でボイストレーニングに挑戦してみませんか?

神薙拓那のボイトレ部屋

神薙拓那【カミナギタクナ】通称なぎーのボイストレーニングに関するあれこれ。 ボイトレを教えはじめ10年を過ぎ、積み重ねた知識や技術をまとめていきたいと思います。 何かしら、誰かしらのお役に立てば。

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